悩ましい相続空家の再生
当協会のホームページをご覧いただき有難うございます。
常務理事および教育研修委員長を務めております志村です。
私が担当しております、教育研修委員会は会員向けに、年に7回の定例勉強会と、余興も兼ねて年1回の課外での移動例会の企画運営を行っております。
毎回多彩な講師をお招きして、日々自己研鑽に励んでおります。
特に不動産コンサルティングは、不動産に関して、ご相談者のお困りごと、悩みごとを解決する役割を担っていると自負しているところです。
相続と空家
私自身、ご相談が多いのが、相続や空家に関することになります。
相続は事前対策と事後対応に大きく業務が分かれます。空家につきましては最近では再生に注力しています。相続した実家が空家になったケースなどは、昨今の不動産をとりまく環境では、ご自身が経験されている方も多いと思います。
そこで、困った相続空家を無事に問題解決した事例をお話したいと思います。
売却査定価格が難なく出て、特に支障なく売却できる物件であれば、誰も苦労しません。
問題のある空家には、人の問題か物件そのものの問題を抱えていることが常です。
人とは物件を引き継いだ相続人のことです。
購入の意思がある方が不動産を所有する場合は良いのですが、相続によって意識がない状況で所有した場合は、どんな不動産か分からい場合が多いです。
不動産に問題があるケースは、適切な条件で道路に敷地が接していないことや、敷地や隣地にがけや擁壁があって、建物を再建築する際に多額な費用がかかり、解消できないで、空家のままになってしまうことがあります。
可能であれば、親がどんな不動産を所有しているのか調査しておけると良いですね。言い換えれば、いくらで売れるかを知っておくことです。不動産会社に査定を依頼すれば概略はつかめます。但し、査定は無料でしてくれる会社がほとんどですが、強引に売却を進める会社もありますので注意が必要です。
一方、相続人同士に交流がなく、意思疎通がとれず、長期間空家を放置してしまうケースもあります。
放置している空家は法律により、監督行政から指導、勧告、命令、代執行など責任を問われます。そんな時は、お近くの不動産コンサルタントにご相談下さい。
売却価格査定に留まらず、不動産の問題点の洗い出しから改善の提案、不動産の相続人への連絡など、空家解消に向けたお手伝いをすることができます。
具体的な事例
事例でご紹介する物件は、横浜市南区にある戸建です。
子供が巣立ったあとは夫婦で住んでいましたが、ご主人が亡くなり奥様が相続して、しばらく一人で住んでいました。その後、介護が必要なことからご子息の家に転居し空家となりました。
その物件は、適切な条件で道路に敷地が接していなかったので、再建築不可物件でした。
ご子息も何度となく不動産会社に相談したようですが、いずれもお話が進まず、数年間空き家で困っていたようです。
そんな折り、ご子息がご相談に来られました。
まずは売却するために必要な動きをするお手伝いをしました。
一つの方法として、『建築基準法第43条但書による建築審査会の同意』を得る作業をしました。
時間は掛りましたが、ようやく審査会の同意は得られました。ただ、再建築許可を出す条件として隣地の通路の所有者さんからの同意の書面が必要でした。
何度となく協力いただけるようお願いに伺いましたが、結局、最後まで同意が得られず、結果、弊社で空家を引き取ることにしたのです。
空家再生の道
保有した空家はしばらく手つかずでしたが、あるとき、転機がやってきました。それは、居住支援活動を通じて、住宅確保要配慮者さんである精神障害者であり生活保護者さんの入居希望がきっかけでした。
その方は、知り合いの社会福祉士の方からの紹介で、退院後の入居先を探していました。住宅確保要配慮者の方は、大家さんから入居を認めてもらえる賃貸物件を見つけることが極めて困難なことから、私が貸主として、今回の空家を提案した次第です。
改修前のひどい状態で空家を見ていただきましたが、とっても気に入っていただきました。そこから、ご本人の退院に間に合うように、建設会社さんに建物の修善工事を超特急で行ってもらいました。
空家問題の解消と住宅確保要配慮者向けの住宅を探す居住支援活動は、今後、不動産業界では両輪であると思っています。
ちなみに、横浜市の生活保護者さんが受け取れる家賃補助支給額は、単身世帯で52,000円です。
空家で困っている貸主と入居先が無くて困っている借主がお互いに無理なく出会えるように、これからも取り組んでいこうと思います。
尚、当協会では、空家対策や不動産の相続問題も応じておりますので、お気軽にご相談ください。
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執筆者:志村 孝次 |