無償譲渡で負動産を処分する方法と注意点について。
当協会のHPをご覧いただきありがとうございます。
当協会では理事、会員増強を担当しております久保田と申します。
今回は、当協会で定期的に開催しております「不動産無料相談会」で相談件数の多い
「地方の不動産を処分したいがどうすれば良いのか?」についてお話したいと思います。
長く放置されている地方の不動産問題
地方の不動産を取得された理由は「相続で負動産を取得した」とか「40~50年前に将来値上がりが期待出来ると聞いて地方の別荘地を購入した」など様々です。
また、最近では所有者不明土地を解消するために相続登記の義務化がされ、更には令和8年4月1日より住所変更等登記の義務化も決定していること、空き家問題では特定空き家や管理不全空き家など法の整備も進んだことで、価値があるかどうかも分からない不動産を処分したい(子供たちには迷惑をかけたくない思い)と考える方が多くなったように感じております。
私がこの2年間で具体的なご相談をいただいた地方の不動産案件は栃木県那須塩原市で2件、日光市、静岡県伊豆の国市、千葉県富里市、新潟県魚沼市、北海道川上郡のそれぞれで1件あり7件にもなります。
運良く売却が出来た那須塩原市の事例
不動産の一つは、宅地で敷地内には樹木も少なかったこともあり、低価格ではありますが、地元のハウスメーカーの協力により自宅建築を目的とした購入者を探すことが出来ました。ただし、こちらの不動産には敷地内に給水管の引き込みがなかったために私道の所有者より道路掘削の承諾をいただくのに大変苦労をいたしました。
別荘地の所有者は全国に分散しているため書類に判子をもらうだけでも困難を伴います。
もう一つの土地は、売却をするには難しい条件でしたが、隣地にメガソーラー発電所の計画があり、事業者より事業計画の案内が届いたため、このタイミングを逃してはならないとの思いでメガソーラー発電事業者に買い取っていただく交渉をしたところ上手く話をまとめることが出来ました。
上記のように不動産を売却できるケースは僅かであり、「負動産」の場合には売却以外の方法で不動産の処分を考えなければなりません。
※負動産とは、資産価値が低く売却が難しく、所有しているだけで管理コストや手間がかかる不動産です。地方の空き家や山林などが代表的な例になります。
持ち続けることで維持費もかかる悩ましい負動産
今回ご紹介する負動産は静岡県伊豆の国市の約100坪の別荘地(山林)です。
こちらは相続で取得された土地になります。
固定資産税はかかっておりませんが別荘地の管理費が毎年14,400円かかっております。
※課税標準額が30万円未満の土地であれば固定資産税は課税されません。
処分方法を検討するために
先ずは依頼者からお預かりした資料と別荘地の管理事務所が発行している資料から大まかな物件内容の把握をします。
この時点で簡単に売却できる不動産ではないことが分かります。(負動産)
次は現地調査です。
役所や管理事務所では直近で別荘地内に家が建ったのはいつ頃なのか?などの確認を行うことでどれだけ需要のある地域なのかが分かります。
また、現地調査では境界標の確認を行いますが、こちらの不動産は山林ですので斜面があり沢山の樹木もあり境界標の確認作業をするだけでも一苦労でした。
こちらの別荘地の中には数多くの「売物件」が存在しており、○○コーポレ―ションの社名の入った看板が多く目立ちました。販売状況等を教えてもらうために看板に記載された連絡先に電話をかけてみたところ現在使われていない電話番号でした。さらに○○コーポレ―ションを調べたところ、過去に原野商法の二次被害トラブルに関与したことで実質的経営者が起訴されていたことが分かりました。
上記のことからも相談先は信頼できる不動産会社にしないといけませんね。
現地調査を終えて相談者へのご報告では、
1.低価格でも売却をするのは難しいこと
2.不動産の引き取り業者に引き取ってもらうには100万円以上の費用がかかること
3.相続土地国庫帰属制度の利用は難しいこと
をお伝えした上で負動産の処分方法として不動産の無償譲渡のご提案をさせていただきました。
※相続土地国庫帰属制度の豆知識
相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件を確認すると、建物が存在する土地、境界が明らかでない土地、工作物・車両樹木が地上にある土地などは却下要件となっていることや、10年分の管理費用相当額(20万円~)が必要となることからも相続土地国庫帰属制度を利用するのはかなりハードルが高く簡単ではないと考えるべきでしょう。
国は、所有者不明土地を減らすのが目的のため何でも引き取ってくれるものではありません。
相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件についてはこちらをご参照ください。
考えられる不動産の無償譲渡方法
隣地の土地所有者に声をかけることや自治体が運営する空き家バンクに登録して取得者を探すことも考えられますが、今回は無償譲渡物件の不動産マッチング支援サイト「みんなの0円物件」への登録をご提案させていただきました。
「みんなの0円物件」は空き家バンクと比較すると物件数も多く登録されていることや日経新聞の記事では、成約率8割強と取り上げられていたこともあり、半分期待を込めて登録をお勧めいたしました。
相談者にはご負担がかからないように「みんなの0円物件」への登録作業(写真や物件概要、条件等の登録)や登録後の取得希望者からの問い合わせ対応など煩わしいこともあるため相談者に代わり私が窓口になり進めて行くことにいたしました。
無償譲渡のマッチングサイトに登録をしてから1ヶ月の間に数件の問い合わせがありました。
外国籍の方からの怪しい内容のものや登記代を節約するために取得希望者ご自身で所有権移転登記手続きをしたいなど…
その中から今回の無償譲渡先に選んだのは将来的に社員が宿泊出来る別荘を建てることが目的の長野県の法人でした。
処分するのが難しい不動産であっても誰にでもお譲りして良いというわけではなく、近隣等にご迷惑がかからないような一定の配慮は必要であり、土地の利用方法など最低限のことを確認した上で話を進めることが大切だと考えております。
不動産贈与契約書の作成
無償譲渡をしてトラブルにならないように契約書を作成するようにしましょう。
無償譲渡の際に取り交わす不動産贈与契約書には下記のような条件を定めておくことが大切なポイントになります。
登記手続きに関する内容の取り決めや物件引渡し条件を明確にして現況有姿取引、公簿取引、境界非明示、契約不適合責任免責等の条件を記載しておくと良いでしょう。
※契約書を作成する際には、不動産や法律の専門家に確認することをお勧めいたします。
無償譲渡を行う場合の税金
不動産の無償譲渡を行う際に、当事者が個人か法人かで課税される税金の内容が異なりますので注意が必要です。
では考えられるケースを確認してみましょう。
取引当事者 |
譲渡する側 |
譲渡を受ける側 |
個人→個人への無償譲渡 |
非課税 |
贈与税 |
個人→法人への無償譲渡 |
みなし譲渡所得課税 |
法人税 |
法人→個人への無償譲渡 |
法人税 |
所得税 |
法人→法人への無償譲渡 |
法人税 |
法人税 |
不動産を無償譲渡する場合、譲渡する側にも税金が発生する場合があります。思わぬ負担になってしまうことも考えられますので気をつけなければなりません。
※税務手続きを行う際には、税務署もしくは税理士に確認することをお勧めいたします。
まとめ
不動産の無償譲渡を行う際には、後でトラブルにならないためにも、不動産と税金に詳しい専門家に相談しながら計画するようにしましょう。
当協会ではお客様に寄り添った対応をしてくれる会員が多く在籍しておりますので、不動産でお悩みがあれば一度相談してみることをお勧めいたします。
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執筆者:久保田 充彦 株式会社湘南プラットホーム |