所有不動産の境界確定(確定測量)はするべきです!
当協会で理事を務めています田倉 健です。
不動産業に従事して37年目を迎えています。
私が不動産業に従事したての頃は不動産売買取引をするにあたり、測量はあまり重要視されておらず、ほとんどの物件が登記簿に記載された公簿面積で境界石が無くても、ここですと明示し取引が成立していました。
ところが昨今の不動産売買取引は、確定測量されている物件のほうが売却時にスムーズで有利に進んでいるなか、確定測量がされていない土地・戸建ては売買価格が下がってしまう可能性があり、また最悪のケースとして隣地との不調の為、売買が出来なくなってしまうようなケースもあります。
そこで、現在どのような金額でご自身が所有されている周辺の土地が売買されているのかを調べれば、目を疑うような安値で販売されている現実を知ることになるでしょう。
早速ですが、当社が今年に取引させて頂いた不動産の件です。
確定測量においてのトラブル例
この物件は測量に関して、事前にこのような説明がありました。
「この物件は3件の隣地と面しており、2件の隣地所有者からは境界確定の印鑑をいただいていますが、1件だけこれは違うと主張していて境界を認めず、印鑑がいただけていません。」
ただ、3年前に3件の隣地でこの物件の隣地の確定測量をしたときに、違うと主張している隣地所有者が、ここで間違いないと隣地の確定測量図面に署名押印している書面があり、それに伴い境界石も現地には埋設されていましたし、どうしても承諾がいただけなければ、違うと主張している隣地所有者の主張を、こちらがみとめれば問題はないだろうと、安直に考えていました。
また、売却時にはこの状況を購入希望者にしっかりと説明し、隣地所有者の立会い拒否があった場合などの手続きをとる負担等、その反射的効果として売買価格も相場より低価格で設定して、売却に踏み切りました。
確定測量が不調で出来ない物件には、融資を断られるケースも
売却に入り、2ヶ月もたたないうちに申込みが入りました。
申込者に境界確定が出来ない状況をすべて説明して、それでもいいですかと確認をした後、
それでも購入したいと購入希望の意思を示していただき、住宅ローンの事前審査を出す為に申込書類一式を提出したところ、金融機関から「確定測量が不調で出来ない物件には融資が出来ない」と断られてしまいました。
金融機関に状況を説明したのですが理解してもらえず、他の金融機関数行にも問い合わせをしたのですが、原則的には確定測量図が必要と言われ、慌てて不調になっている隣地所有者のところに行き、揃っている書類を全てご覧になっていただきながら説明をして納得して頂けるように話をしましたが、その書類は見たことがない、署名も押印も私はしていないと言われてしまい、どうしようもない状況に陥った為、隣地所有者の主張している場所なら承諾していただけるか確認しました。
その隣地所有者は、それなら承諾するとお返事をいただき、再度3件の隣地所有者と立会いをし境界の場所が変更になる事を説明していたら、違うと主張していた隣地所有者とは別の隣地所有者が、「そこが変更になると、別の隣地所有者の境界の辻褄が合わなくなるので、それには承諾できない」と言われ、最終的に決着がつきませんでした。
その後も何度か話合いをしたのですが、どちらの隣地所有者も承諾にいたりませんでした。苦肉の策で境界訴訟をするしかない状況になってしまいました。
境界訴訟をする事によって無駄な時間と労力がかかり、また無駄な費用も発生します。
このような経験から、皆様の所有している不動産がもし確定測量できていない不動産だったら、何があるか分からないこのご時世だけに、1日も早くお持ちの不動産の確定測量をすることをおすすめ致します。
時間の経過とともに隣地の所有者も代替わりになったり、売買して所有者が変わったりと最初に取り決めた内容をいつまでも覚えていてくれていれば、今回のような不調になるような事はなかったのでしょうが、人はいつまでも元気ではいられませんし、ましてや不死身ではありませんので仕方ありません。
当協会には経験豊富な測量士・家屋調査士の会員が在籍していますのでお気軽にお問い合わせ下さい。
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執筆者:田倉 健 株式会社マリンズ不動産 |